元NPB審判員に「キャッチングがナンバー1、いや世界一だった!」と評される谷繁元信氏。
「谷繁元信氏のキャッチングは、一切動かない」
こんな風によく言われてますが、まったく動いないわけではありません。
厳密にはキャッチャーミットが動いていないように見えてるんです。
プロ野球のキャッチャーのなかで「捕球前〜捕球後」まで
まったくキャッチャーミットを動かさない選手などいませんし、それは無理です。
それと比較すると動いてないように見えるのだと思います。
「なぜ谷繁元信氏のキャッチングはキャッチャーミットが動いてないように見えるのか?」
「谷繁元信氏のようなフレーミングは、どうすれば再現できるか?」
こんな風に思ってる方に向けて、
谷繁元信氏のフレーミング(キャッチング)について解説していきます。
構え方
捕球する前
捕球したあと
この3つのポイントで谷繁式フレーミング、そして再現するコツもお話していきます。
1日で谷繁元信のようなキャッチャーミットを動かさないキャッチングはできませんが、
意識すれば少しずつ谷繁式のフレーミングができるようになります。
谷繁式キャッチングを身につけて、審判から信頼されるキャッチャーになりましょう!
コンテンツ
谷繁元信氏のフレーミング(キャッチング)
早速、谷繁元信氏のフレーミング(キャッチング)を解説していきます。
この3つのシーンに分けて、谷繁元信氏のキャッチングを解説します。
構え方
まずは谷繁元信氏の構え方からです。
谷繁元信氏の構え方の大きな特徴は2つあります。
(※上記動画を見ながらだとわかりやすいです)
両足のかかとが少しだけ浮いている
左ヒジは左ヒザの上に持ってきている
まず谷繁元信氏がキャッチャーの構えをしたとき、両足のかかとが少しだけ浮いてます。
両足のかかとを少しだけ浮かせる理由は、身体の重心を前(つま先側)にするためです。
キャッチャーの構えをしたときに身体の重心を後(かかと側)に持ってくるメリットは、
ほとんどないというか、まったくありません。
身体の重心が後(かかと側)にあるとショートバウンドの反応が遅れますし、
勢いのあるボールに身体が負けてしまったり、左腕の操作性も悪くなったりします。
構えるときに身体の重心が後にある選手はいないよね。
キャッチャーの構えをしたときに身体の重心を前に持ってこれば、
ショートバウンドへの対応もキャッチャーミットの操作性も上がります。
また、谷繁元信氏氏の構え方のもう1つの特徴は、左ヒジを左膝の上に持ってきてることです。
この左ヒジの位置がキャッチャーの基本的な構え方ではあるんですけど、
プロ野球のキャッチャーで左膝の上に左ヒジを持ってきる選手は意外と少ないです。
ほとんどのキャッチャーは左膝よりも内側に左ヒジを持ってきています。
この左ヒジを左膝の上に持ってきてるのが谷繁元信氏のキャッチングの礎になってると思います。
左ヒジが左膝の上にあることでキャッチャーミットの可動域が狭くなり、
キャッチャーミットが動いていないキャッチングに見えるんですよね。
キャッチャーの構え方はこちらで詳しく解説してます。
捕球する前
つづいて谷繁元信氏の捕球する前の動作です。
「谷繁元信氏のキャッチングはキャッチャーミットが動かない!」
こんな風によく言われてますが、よ〜く見ると動いてますよね。
谷繁元信氏は捕球をする前に、キャッチャーミットを手前に引いてます。
①キャッチャーミットの正面をピッチャーに見せる
②キャッチャーミットを手間に引く
③手前に引いたキャッチャーミットを戻して ボールを捕球する
谷繁元信氏のキャッチングはキャッチャーミットがまったく動かないと言われてますが、
それなりにキャッチャーミットは動いてるんですよね。
キャッチャーミットを下に動かせば良いんじゃない?
谷繁元信氏が捕球する前にキャッチャーミットを手前に引く理由は2つあります。
キャッチングをしやすくする
ピッチャーにキャッチャーミットの面を見せたままにする
キャッチングもバッティング同様にタイミングが大切です。
キャッチャーミットを動かすタイミングが遅いとボールに追いつけなかったり、
早すぎたらキャッチャーミットの芯で捕球できず、良い音が鳴りません。
谷繁元信氏はキャッチャーミットを手前に引くことでピッチャーとタイミングを合わせて、
キャッチングをしやすくしてるのだと思います。
また、もう1つの理由はピッチャーにキャッチャーミットの面を見せたままにしたいからです。
谷繁元信氏は「ピッチャーにキャッチャーミットの面を長い時間見せるようにしたい」と、
いろいろなところで語っていますよね。
その考え方から生まれたのがキャッチャーミットを手前に引く発想なんだと思います。
キャッチングするときにピッチャーとタイミングを合わせたいなら、
普通はキャッチャーミットを下に1度下げます。
でもキャッチャーミットを1度下げてしまったら、
ピッチャーからキャッチャーミットの面は見えにくくなり、谷繁元信氏のポリシーに反します。
そこで生まれたのがキャッチャーミットを手前に引く予備動作です。
キャッチャーミットを下げるのではなく手前に引けば、
ピッチャーにキャッチャーミットの面を見せたまま、タイミングを取れますよね。
谷繁元信氏のキャッチングは一切動かないと言われてますが、
そんなことはなく、捕球する前にはキャッチャーミットを手前に引く動作をしてます。
それはピッチャーとのタイミングを合わせつつ、
ピッチャーにキャッチャーミット(的)を長い時間を想いから始まっているんですよね。
キャッチャーミットを下げてから捕球するメリット&デメリットはこちらで解説してます。
捕球したあと
最後が谷繁元信氏の捕球したあとの動作です。
谷繁元信氏は捕球したあと、まったくキャッチャーミットを動かしてません。
『捕球したあとにキャッチャーミットを動かすのがフレーミング』
『審判にボールをストライクと判定させるのがフレーミング技術』
こんな風にフレーミングを考えてるキャッチャーは意外と多いですが、これは大きな間違いです。
フレーミングとは審判にボールをストライクとジャッジさせたり、
ボールを捕ったあとにキャッチャーミットを動かすことでもありません。
審判に正確な判定をしてもらうためにする
ボールを捕ったあとにキャッチャーミットを動かさないようにする
これが正しいフレーミングの考え方です。
最終的には自チームも不利になるし、
フェアプレー精神などとも言えないよね。
また、谷繁元信氏も「審判に正確に判断してもらうためのフレーミング」だと、
いろんな野球の番組で話しています。
『ボールを捕ったら、キャッチャーミットは動かさない』
それが谷繁元信氏のキャッチングの最大の特徴であり、フレーミングの大原則です。
ピッチャーにも審判にもボールの正確の位置を見てもらうために、
ボールを捕ったらキャッチャーミットを動かさないのが谷繁式フレーミングになります。
古田敦也式のキャッチング方法はこちらでまとめています。
谷繁式フレーミング(キャッチング)のコツ
谷繁式のフレーミング(キャッチング)方法のコツをお話します。
谷繁式のフレーミング(キャッチング)方法を再現するには、5つのポイントがあります。
谷繁式のフレーミング(キャッチング)は簡単そうに見えますが、
実際にやってみるとめちゃくちゃ難しいことに気づくはずです。
でも、この5つのポイントを意識しなければ再現できないので、
谷繁式キャッチングをマスターしたいかたは参考にしてください。
柔らかい股関節
谷繁式フレーミング(キャッチング)方法を再現する1つ目のコツは、
柔らかい股関節を手に入れることです。
キャッチャーをするなら股関節は柔らかいのに越したことはありません。
股関節が硬いとブロッキングの反応が遅れたり、体勢が悪くなりトンネルをしたり、
試合で何回も立ったり座ったりをするので股関節に疲労が溜まります。
また、谷繁元信氏の構え方は両足のかかとをあげるので、
股関節が柔らかくないと上手く座ることができません。
谷繁式フレーミングを手に入れるために、まずは股関節を柔らかくしましょう。
股関節を柔らかくするストレッチ方法はこちらで解説してます。
安定した下半身
つぎの谷繁式フレーミング(キャッチング)方法を再現するコツは、
安定した下半身を手に入れることです。
これも谷繁元信氏の構え方を再現するのに必要になってきます。
試しに両足のかかとを浮かせて、キャッチャーの構えをしてみてください。
一瞬だけならそこまでの負担はかかりませんが、
これを守備のときにずーっとしようと思ったら確実に下半身が疲れます。
下半身が疲れると両足のかかとをあげるキャッチャーの構え方は難しくなります。
谷繁式フレーミングを再現するなら股関節の柔らかさだけではなく、
安定した下半身を手に入れるのもマストです。
股割りや他の下半身トレーニング方法はこちらで詳しく解説してます。
キャッチャーミットの動かし方
3つ目の谷繁式フレーミング(キャッチング)方法を再現するコツは、
キャッチャーミットの動かし方です。
これは意識すれば今日からできます。
①キャッチャーミットの面をピッチャーに向ける
②投球とタイミングを合わせるようにキャッチャーミットを手前に引く
③ボールが来たらベストなタイミングで元の位置に戻して捕球する
キャッチャーミットを下げてからではなく、
キャッチャーミットを手前に引いてボールを捕りにいけばOKです。
ポイントは2つあります。
1つ目は、キャッチャーミットの面をピッチャーに見せたままにすることです。
キャッチャーミットの面がピッチャーにちゃんと見える状態を保ちながら、
ボールとタイミングを合わせるようにキャッチャーミットを手前に引きます。
もう1つのポイントは、キャッチャーミットを戻してから捕球することです。
キャッチャーミットを手前に引いて戻しながら捕球をすると、
ピッチャーにも審判にもキャッチャーミットを動かしてるように見えてしまいます。
谷繁式キャッチャーミットの動かし方は、
キャッチャーミットが動いてないように見えるのが最大のポイントです。
それを再現するにはキャッチャーミットを元の位置に戻してからボールを捕ります。
そうすればキャッチャーミットが動いてないように見えるんですよね。
ビタ止めキャッチングをする方法はこちらで解説してます。
左腕の使い方
つづいての谷繁式フレーミング(キャッチング)方法を再現するコツは、左腕の使い方です。
キャッチャーミットを手前に引いてボールを捕りにいくだけなら、
意識すれば今日からでも出来るんですけど…、
実は1試合ずーっと続けるのは相当しんどいです。
キャッチャーミットを下げないということは手に持ってる荷物を下ろさないと同じことなので、
左腕が休まる暇などなく、1球また1球と左腕に疲労が溜まっていきます。
では、どうすれば1試合通してキャッチャーミットを手前に引くキャッチングができるのか?
方法は2つあります。
まず1つ目が強靭な左腕を手に入れることがです。
キャッチャーミットを下げないのは左手に持ってる荷物を一回も下ろさないことと同じなので、
それに耐えうる左腕さえ手に入れれば、1試合通して谷繁式キャッチングはできます。
もう1つが左腕を極限までリラックスさせる方法です。
キャッチャーミットを構えるときに左腕の力を極限まで小さくすれば、
1試合通して谷繁式キャッチングをできます。
リラックスした状態のほうが長く持てますよね。
理屈はこれと同じです。
キャッチャーミットを構えるとき無意識レベルで左腕に力が入ってるので、
その力でさえも左腕からなくしましょう!
実際に谷繁元信氏は「ボールは捕るではなく、受けるイメージ」だと言っています。
このイメージを再現するには左腕の力をリラックスさせないとできないですし、
このイメージだからこそキャッチャーミットを下げなくても疲労が溜まりにくいのだと思います。
谷繁式の最大の難所「キャッチャーミットを手前に引く捕り方を1試合続ける」の攻略は、
左腕の使い方(いかに左腕をリラックスさせるか)がポイントです。
キャッチャーのキャッチングやフレーミングはこちらで詳しく解説してます。
ピッチャーファーストの考え方
最後5つ目の谷繁式フレーミング(キャッチング)方法を再現するコツは、
ピッチャーファーストの考え方です。
これが谷繁式フレーミングで1番大切なものだと思ってます。
どこのポジションでもそうですが、いかに自分がプレーしやすくできるかと考えがちです。
キャッチャーミットを下げたほうが疲れない
左膝をついたほうがラク
コースを構えると疲れるから真ん中付近に構える
ついつい自分ファーストになって構え方や捕り方、
ピッチャーへの返球を座ったままにしてしまいます。
でも、谷繁式キャッチングを再現するならピッチャーファーストがマストです。
「どうすればピッチャーが投げやすくなるのか?」
それだけを考え、突き詰め、実践するのが谷繁式キャッチングです。
キャッチャーのボールの捕りやすさやスローイングのしやすさも当然大切ですが、
ピッチャーのためを最優先にしてから、キャッチャーのことを考えましょう!
谷繁式キャッチングの極意は「ピッチャーファーストの考え方」です。
古田式と谷繁式キャッチングの違いはこちらで解説してます。
シンプルだからこそ難しい
谷繁元信氏のフレーミング(キャッチング)方法について解説しました。
「構え方」「捕球する前」「捕球したあと」の3つのポイントで谷繁式フレーミングには特徴があります。
構え方:両足のかかとをあげる
捕球する前:キャッチャーミットを手間に引く
捕球したあと:キャッチャーミットを動かさない
谷繁式フレーミングをまとめると、こんなにもシンプルですが、
シンプルだからこそ再現するのが難しいと思ってます。
柔らかい股関節
安定した下半身
キャッチャーミットの動かし方
左腕の使い方
ピッチャーファーストの考え方
とくに左腕の使い方は1日でマスターできるものではないので、
谷繁式フレーミングをマスターするために地道に続けていきましょう!